いますぐ実践! Linuxシステム管理

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いますぐ実践! Linux システム管理 / Vol.066 / 読者数:856名

こんばんは、うすだです。

先週、1回おやすみをいただきました。
おかげさまで、その間に、ひとんちサーバから専用サーバへの切替えが、 無事完了しました。

アプリケーションのバージョン違いなどのハードルはありましたが、 まあやはりそこはさすがの Linux です。 大きな変更を強いられたり、どはまりすることなく、 あっさり移行することができました。

とはいえ、なーんにもなかったわけではありません。
DNS の TTL の値を短くするのを忘れてしまい、しばらくは、 新旧両サーバを同条件で稼働させないといけませんでした。
でも、そんな程度で済んだのですから、よかったと思います。
(それも、ある意味よい経験だったと思いますし。)

というわけで、今、シス管のページを見て頂くと、 あらあら以前より速くなってるわね、という状態を体験していただけます。
といっても、メルマガだけ読んでる方は、わからないですよね…。
まあ目的はなんであれ、ときどきは WWW の方も見ていただけますと、 幸いでございます。過去の記事もぜんぶ読めますよ! ということで。

いますぐ実践! Linux システム管理
http://www.usupi.org/sysad/

宣伝に持ってったところで、今週も、はりきってまいりましょう!

今週のお題 - お試しネットワーク環境を作る 〜 Proxy ARP 編

前回、IP マスカレードを使用して、お試しネットワーク環境を構築する方法を、 ご紹介しました。

Vol.065 - お試しネットワーク環境を作る
http://www.usupi.org/sysad/065.html

お試し LAN から社内 LAN にアクセスできて、 しかもお試し LAN の存在に気づかれないという、 こっそり試すにはもってこいの構成でした。

しかし逆に、社内 LAN からお試し LAN が見えてほしいぞ! …なんていう貴兄もいらっしゃるのではないかと思います。

そんなときは、ポートフォワーディングを設定すれば…と言いたいところですが、 使用するポートをいちいち設定するのも、結構面倒です。

まるっと見えてもいいんだったら、もっと簡単な方法があります。

というわけで、今週は、Proxy ARP を使用して、 お試しネットワーク環境を構築してみたいと思います。


今回は、以下のような環境を想定して、話を進めます。
(前回と同様に、等幅フォントでご覧ください。)

         社内 LAN                                  お試し LAN
  +------------------+-+                    +-+------------------+
     192.168.1.0/24  |                        |  192.168.1.0/28
                     +-----[Linux マシン]-----+
          192.168.1.55(eth0)            192.168.1.1(eth1)

  <------------------------------------><------------------------>
                既存の部分                  新たに構築する部分

なるべく、前回の構成に合わせました。
自由に使える Linux マシンがあり、今回は、 そのマシンにネットワークインタフェースを追加して、お試し LAN を作ります。
ただ、お試し LAN のネットワークアドレスが、前回とは異なります。

社内 LAN からは、 お試し LAN が同じネットワーク上にあるように見える必要があります。 ですので、お試し LAN のネットワークは、 社内 LAN の一部である 192.168.1.0/28 を、使わせてもらいます。
(違うネットワークだというのを知っているのは、お試し LAN 上のマシンと、 間を取り持つ Linux マシンだけ、というところがミソです。)

念のため、使えるアドレスの範囲を、以下に示します。

  社内 LAN で使えるアドレス:    192.168.1.16〜254
  お試し LAN で使えるアドレス:  192.168.1. 1〜 14

それでは、設定方法をご紹介しましょう。

まず、物理的に上記を接続して、Linux マシンの eth0, eth1 をそれぞれ設定します。 もし、その場限りの刹那的な設定で済ませたいなら、以下を実行します。
(そうでないなら、メニューからそれっぽいのを選んで設定してください。)

  # ifconfig eth0 192.168.1.55 netmask 255.255.255.0 up
  # ifconfig eth1 192.168.1.1  netmask 255.255.255.240 up

そして、同じく Linux マシン上で、以下を実行します。

  # ifconfig eth0 192.168.1.55 netmask 255.255.255.0 up
  # echo 1 > /proc/sys/net/ipv4/ip_forward
  # echo 1 > /proc/sys/net/ipv4/conf/eth0/proxy_arp

1つ目は、eth0 と eth1 とで、パケットを行き来させるために必要な設定です。 そして、2つ目が、Proxy ARP の設定です。
上記を恒久的に(再起動後も自動的に)設定したいなら、 /etc/sysctl.conf に以下を追加しましょう。

  net.ipv4.ip_forward = 1
  net.ipv4.conf.eth0.proxy_arp = 1

はい、設定自体は、以上で完了です。意外と簡単でしたね。

あとは、お試し LAN に適当なマシンをつないで、確認するだけです。
適当なマシンには、192.168.1.0/28 に属するアドレスを割り振ります。
そして、デフォルトルートには、192.168.1.1 を指定しましょう。

たとえば、適当なマシンが Linux で、これまた刹那的に設定するなら、 以下のように実行してください。
(以下では、192.168.1.10 を割り振っています。)

  # ifconfig eth0 192.168.1.10 netmask 255.255.240.0 up
  # route add default gw 192.168.1.1

そして、社内 LAN 上のマシンにアクセスします。
また、社内 LAN から、お試し LAN 上のマシンへのアクセスも、 確認してみましょう。(とりあえず ping あたりで試せばいいと思います。)

もしうまくつながらない場合は、 tcpdump などを使ってパケットの有無や内容を確認してください。 あるいは、それぞれのマシンの syslog などを確認してみましょう。 (それでもだめなら、ご連絡ください。)


以上、Proxy ARP を用いた、お試しネットワーク環境の構築方法でした。

Proxy ARP って、あまり聞かない言葉ですが、PPP で端末を接続したときなどに、 さりげなく使われている、わりとふつーの仕組みです。
(電話の向こうに端末があるのに、LAN 上にいるように見えますよね。)

わたし自身は、お試し LAN 上に WWW サーバなどを置いて、 間をとりもつ Linux マシンにフィルタリングさせる、 という構成を大昔に作ったことがありました。 (当時、WWW サーバにフィルタを仕込めなかったのですね。)

しかし、どういう仕組みで通信できているのか、 不思議に思われるかたもいらっしゃるかもしれません。
そのあたりを説明すると、また長くなってしまいますので、 今回は宿題にまわしました。申し訳ありませんが、ご了承くださいまし。

宿題の答え

先週の宿題は、

  IP マスカレードを使用したときの、お試し LAN 上のパケットと、社内
  LAN 上のパケットを、見比べてみましょう。

でした。

前回と同構成で、双方のインタフェースに対して tcpdump を実行すれば、 それとなくわかるのではないかと思います。

今回は、内側のマシン 172.16.1.101 から外側のマシン 192.168.1.254 へ TCP 80番…つまり http でアクセスするところを、覗き見てみましょう。

         社内 LAN                                  お試し LAN
  +-+----------------+-+                    +-+----------------+-+
    | 192.168.1.0/24 |                        | 172.16.0.0/16  |
    |                +-----[Linux マシン]-----+                |
    |     192.168.1.55(eth0)            172.16.1.55(eth1)      |
    |                                                          |
    |192.168.1.254                                172.16.1.101 |
  [外側のマシン]                                    [内側のマシン]

まずは、内側の eth1 をキャプチャした結果です。

  # tcpdump -n -i eth1 port 80
  tcpdump: listening on eth1
  14:34:52.751393 172.16.1.101.39308 > 192.168.1.254.http: S \
    3624815825:3624815825(0) win 5840 \
     (DF) [tos 0x10] 
  14:34:52.751393 192.168.1.254.http > 172.16.1.101.39308: S \
    2840795771:2840795771(0) ack 3624815826 win 65535 \
    
  14:34:52.751393 172.16.1.101.39308 > 192.168.1.254.http: . \
    ack 1 win 5840  \
    (DF) [tos 0x10] 

上記は、TCP セッションを確立する、3ウェイ・ハンドシェーク部分です。
IP マスカレードとか関係なく、 外部の 192.168.1.254 と普通に通信しているように見えます。 いや実際そうなんですが。

次に、外側の eth0 をキャプチャした結果です。

  # tcpdump -n -i eth0 port 80
  tcpdump: listening on eth0
  14:34:52.751393 192.168.1.55.39308 > 192.168.1.254.http: S \
    3624815825:3624815825(0) win 5840 \
     (DF) [tos 0x10]
  14:34:52.751393 192.168.1.254.http > 172.16.1.101.39308: S \
    2840795771:2840795771(0) ack 3624815826 win 65535 \
    
  14:34:52.751393 192.168.1.55.39308 > 172.30.1.254.http: . \
    ack 2840795772 win 5840  \
    (DF) [tos 0x10] 

同様に、3ウェイ・ハンドシェークしている部分です。
内側から外側のパケットは、送信元が 192.168.1.55 に変更されてます。
かたや、外側から内側のパケットは、宛先が 172.16.1.101 です。

ここからは、カーネルの中を確認したわけではないので、推測です。
POSTROUTING でマスカレードということは、 外側のインタフェースで書き換えを行うため、外に出ていくときや、 外から受けとったときには、すでに書き換えが終っていて、 上記のようになるのではないか、ということではないかと思います。
(違っていて、真相をご存知の方は、是非是非ご教示くださいませ。)

今週の宿題

今週の宿題は、

  Proxy ARP を使用したときの、お試し LAN 上のパケットと、社内 LAN
  上のパケットを、観察してみましょう。

です。

というわけで、実際にやりとりしているパケットを観察して、 Proxy ARP の種明かしをしてみてください。
(ぜんぜん関係ありませんが、観察って書くと、夏休みの自由研究を思い出しますね。 …しませんか。)

あとがき

わたしは、お試し環境として、主に VMware Player を使っています。

VMware Player
http://www.vmware.com/ja/products/player/

VMware Player を使う理由は、それが無料だったからです。

…あ、いやいや、それだけではなく、 以前 VMware Workstation を使用していましたので、 とっつきやすかったというのもあります。
Linux でも Windows でも動くのも便利ですね。 メインマシンが Linux なわたくしとしましては、これも大きなメリットと言えます。

さて、最近、(わたしにとって)とってもサプライズなことがありました。
それは、あの Microsoft が、Virtual PC 2004 を無償公開したことです。

Microsoft Virtual PC ホーム
http://www.microsoft.com/japan/windows/virtualpc/default.mspx

以前から、Microsoft 主催のセミナーなどで、 講演者の方々が使っているのを見ていて興味は存分にありました。

てなわけで、無料や無償にすこぶる弱いわたくし、 早速ダウンロードして試用してみました。
当然、Windows でしか動きませんので、Windows XP に入れて試しました。

設定方法などは、VMware を触ったことのあるひとなら、 ほぼ違和感なく使えると思います。微妙に違いはあるものの、 大差はありません。
どちらかと言うと、VMware よりもいろいろ聞かれないので、気楽です。

デバイスは、USB を除けば、基本的なものが揃っています。 VMware と同様に、CD や FD のイメージファイルを、デバイスとして使えます。
ただ、ビデオカードが、Virtual PC では S3 Trio64 をエミュレートしています。 VMware では専用のドライバが必要(あるいは VGA どまり)でしたが、 Virtual PC では既存のドライバで動作するのが、ちょい楽です。

試しに、 仮想マシンに Windows 2000 Professional と Fedora Core 3 を入れてみました。 が、しかし、Fedora Core 3 は、 インストール後再起動したらおかしくなってしまいました…。
(何かやり方がまずかったのかもしれません。後日再トライしてみます。)

というわけで、肝心の使用感は Windows 2000 だけですが、 まあこんなんかなっていうくらいの速度でした。 つまり、VMware と同程度ではないかと思います。 強いて言えば、Virtual PC の方が速いかもっていう程度です。
ただ、リジュームの際に、VMware では少しもたつきますが、 Virtual PC では、わりとすんなり起動しました。

以上、まとめますと、性能は VMware と同等っぽいですが、 VMware よりとっつきやすいかな、と思いました。
普段 Windows を使っていて、VMware Player を試したことのないかたは、 Virtual PC を試してみるとよろしいのではないでしょうか。

わたしは、Linux がメインマシンですので、 これからも VMware Player を使い続けると思いますが。

まあ、PC エミュレータがなんであれ、ゲストOS を持ち運んで、 どこでも同じ環境が動作するっていうのは、理想的ですね。
USB メモリに入れて持ち運んで、どこでも同じ環境で作業、 という時代がそのうち来るかもしれませんよ。というか来てほしいと思ってます。

今週も、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、来々週に、お会いしましょう!

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